愛は惜しみなく与う⑦
屋上に出ると肌寒い季節がやってきた


「泉?追試始まるよ」


声をかけてもぼーっとしているだけ。
困ったなぁ


「朔でさえ、追試受けようとしてるよ?これサボったら、泉また2年生だよ?」


何回やるんだよって言われるよ。

泉は制服にも着替えずに、ぼんやりとしてるだけ。私服というか寝巻きの上の服をパーカーに替えただけ。

はぁ



「杏は、最後悲しそうな顔した」


「え?」


「バイバイって言ったとき、泣きそうだった」


何を言ってるんだか


「とびきりの笑顔で待っててって言ってたじゃん。泣いてないよ。」

「んーん。違うんだ。俺はそれが気になって、追試どころじゃない」

「気になったところで、志木さんを含め、全く連絡つかないじゃん。どうしようもないよ。待つって言ったから待とうよ」


自分より凹んでる奴を見ると、自分に冷静さが戻ってくる。

俺だって寂しいけどさ

待つって決めたから



「帰ってこなかったらどうしようって思いすぎて、吐き気がしてきた」

「案外メンタル弱いよね」

「俺はわりと繊細だ」
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