愛は惜しみなく与う⑦
母と娘
「杏様?そんなに外を見つめたところで、王子様は現れませんよ?」
「は?何言ってんの。王子様待ってんちゃうねん。診察の時間まだかなって思ってるだけや!」
志木は本当に病院で寝泊りする勢いで、ずっとそばにいる。
敵襲があるかもと笑っていた。
素直に心配してるゆうたらええのに。
あたしが落ち込んでると思ってる
さすがに冷静になってきたよ
「泉達が帰って、もう1ヶ月ですか…」
あんたがしみじみしてどうすんねん。あたしの方がそれを思って黄昏たい気分や
「髪、伸びてきましたね」
「ほんまやな。もう切ってから半年やしな。髪の毛すいたり染めたりはしたけど、長さ切ってなかった」
でも、あの頃の杏様の髪の長さには、まだ遠い。そう言って志木は、いつもどおりあたしの髪を櫛でとかす。
「別にええよ。もう腕も使えるし」
「そう言わずに。お医者さんだって驚いてたんですから。まだ大人しくするべきです」
やれやれ
過保護に拍車がかかってる気がする。
とりあえず、あの日から1ヶ月が経った。
泉達と別れてから。