愛は惜しみなく与う⑦
その後、鈴からどう聞いたか分からんけど、サトルの話をした。
今もまだ残ってる、サトルに首を締められた痣をみて、母上は涙を流した。
こんな事を言うのはおかしいかもしれへんけど、身体が傷つくのは慣れてしまった。
こんな酷い怪我は初めてやけどな?
人生の経験として、あたしはこの事を過去にできるから、もういい。
「鈴は?どう?頑張ってる?」
「そうね。あの子は今まで以上に頑張ってると思うわ。あの子自身もいっぱい思う事はあるでしょうけど……今はがむしゃらにやるしか無いんじゃないかしら」
仕事を、鈴と志木に押し付けてきたと笑った
「そうやって笑う方が、お母様らしいですね」
なにも考えずに口から言葉が出た。
やば、上から目線すぎるやろ。言うつもりなかった。
距離を縮めてくれたことに嬉しくて、こっちも詰めてしまった。
でも母上は何も言わずににこりと微笑んだ
「杏、貴方はこんな言葉を知っている?」
「言葉?どんな言葉ですか?」
「ロシアの小説家のトルストイの言葉よ」
とるす、とい?知らない…有名な人なんかな?