愛は惜しみなく与う⑦

街を歩けばカップルだらけ

去年は何してたっけ

そんなことも思い出せない


杏がいない日々は、これといって思い出に残るようなこともなかった。


俺もとことん馬鹿だな


口から白い息が出る


こんな人混みは嫌いなはずなのに、杏のためにプレゼントを買うと思ったら、なんだか楽しくなる。


「総長?どうしたんすか?」


声をかけられてもひたすら無視をしていたら、聴き慣れた声がした。


「拓也?なにやってんの?」

「いや、俺のセリフです!こんな人の多い時間にどうしたんですか?」

「ちょっと買い物。お前は?」

「俺は、両親のクリスマスプレゼント を買いに来たんです」

なるほどな
拓也らしくていいな。


「総長はどこにいくんですか?」

「決めてない。ブラブラして良さそうな店に入る」

「えっと……誰のプレゼントですか?」


あ、聞いてもいいですかね?と慌てる拓也。別に隠してるつもりもないからいい。


「杏にクリスマスはサンタやってやるって言ったから…買いに来た」


誕生日にはネックレスをあげた。
< 375 / 404 >

この作品をシェア

pagetop