愛は惜しみなく与う⑦
「あら、泉くん。また来てくれたの?」
「はい。クリスマスなんでケーキでも買おうかと。まぁそれと……写真を撮りたくて」
新から借りた一眼レフ
押せば撮れると言われて渡された。
「写真?」
「杏に…関わってくれた人の写真を撮ってて」
でも今は忙しいかな?バイトの子がバタバタと走り回っている。
「俺、コーヒー飲んで待ってます。少し手が空いたらお願いします」
「わかったよ。あと少しでもう1人バイトがくるから、その時ね」
「はい、お願いします」
窓際の1番端っこの席でコーヒーを飲む。
自分で言うのもなんだけど、浮いている。マドリカはメルヘンな内装だから。なんか俺がいると、メルヘン世界を壊す悪の親玉みたいだ。
と、杏に笑って言われたことがある。
親玉って…
時々聞こえてくる杏の名前。
常連さんが今日も居ないのかい?と千恵子さんに尋ねている。
杏を心配してくれる人がこんなにいるんだ。
少しすると目の前にケーキが運ばれてくる。
「いや、俺頼んでないです」
バイトの女がニコニコと笑って俺を見る。杏と同じ時期くらいに入ったって言ってたバイトかな…