愛は惜しみなく与う⑦

「これ、杏さんが考えたケーキですよ!!店長が杏さんのレシピを元に作って昨日から販売してるんです」


杏が考えたケーキ?
杏は自分のケーキがもしかしたら店頭に並ぶかもしれないと喜んでいた。
夜な夜な急にキッチンでケーキを作ったり、挑戦しすぎた味でボツになったケーキを朔に食べさせたり…


杏は楽しそうにしていた


そうか


「杏のケーキか」


見た目はどうだろ。チョコケーキ?に見える。俺甘いものはあんまり好きではないけど…杏が考えたケーキなら全部食べれる気がする。

食べてみてください。と言われる。

こいつ、食べるとこ見てるのか?そう思ったけど、感想を言うべきなんだろうと思い一口食べてみる。


そして


口の中に入れた瞬間、涙が出そうになった



「わかりますか?これ、杏さんが甘いものが苦手な人にって作った、ビターテイストのケーキですよ。貴方を…思って考えたケーキです」


早く杏さん、帰ってこれるといいですね。そう笑って俺の席から去った。


「おいしいよ。ありがとう」


涙がでそうになるのを堪えた。危なかった。せっかくのケーキなのに、泣いて味が分からなくなるところだった。
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