愛は惜しみなく与う⑦
えっと、このボタン押せばいいんだよな?


「はーい。じゃあ撮ります」


こうやって写真なんて撮ることはなかった。でも杏はよく、何気ないその瞬間を写真で撮れたら楽しいといって、携帯で写真を撮っていた。

そして、東堂家の敷地の、志木さんの家庭菜園の下の地下室。


杏はそこに、沢山写真を飾っていた


ここに自分は居たんだと、噛み締めるかのように、写真を眺めていた。
学園祭の写真や、祭りの写真、杏は携帯から印刷したのか、沢山の俺たちの写真も持っていた。


もう戻れない過去、縋るような思いで写真を見る杏に、少し心が痛んだ



もうそんな風に思わなくていい。

思い出として写真を見れるように。
杏の居た場所は、綺麗な思い出にできるように。

杏の居場所はここだよって伝える為に



アルバムを買った。
クリスマスプレゼントになるかわからないけど。


そこにいっぱい写真を入れようと思った。杏がいつ帰ってくるか分からないけど、杏に関わってくれた人たちの写真で埋め尽くそうと思った。

きっと杏は喜んでくれるから。


昨日は家に帰って、全員の携帯から使えそうな写真を送らせてそして印刷した。
< 386 / 404 >

この作品をシェア

pagetop