愛は惜しみなく与う⑦
にゃーにゃーと甘えるように足にすり寄ってくる。困った。動けなくなった。

猫の近くにしゃがんだまま俺は動けなくなっていた。マフラーフル無視して俺の足かよ。
マフラーいらねぇの?


マフラーを持っていくべきか、マフラーをかけて、ここを離れるべきか、んーんーと迷う。
何やってんだろ俺

その状況を客観的に見たとき、自分で笑う




「本当俺、何やってんだろ」




自嘲した

クリスマスに願いが叶うなら


俺は杏に会いたいって願うよ





「あれ?また血だらけなんやと思った」



……?

その声は突然した


さっきまでガヤガヤと聞こえてた周りの音が、一切聞こえなくなった。

そして、その声だけが鮮明に聞こえる。




「なんとなくあの日の場所を歩きたいと思ってタクシー乗らずに歩いてきてん」




手が震えた


声の方を振り返れない



「また拾おうかなって思ってさ。もしかしたら居るかなって思ってん」


笑いながら話してるのが見なくてもわかる



足音はどんどん近づいてくる




「ほなら、ほんまにおったわ」



ふわりと背中に何かが抱きつく

その香りとその体温を



俺は知ってる
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