愛は惜しみなく与う⑦
心の中で悪態をつき、少しイライラが軽減されたか。そう思っていると、隣でまだ座っていなかった杏様が動いた


その手は鈴に伸びた



「何笑ってんの?志木は、死ぬかもしれへんかったんやで?痛くないわけないやろ。『そう、よかった』とちゃうねん。あんたが刺したんや。忘れてるわけちゃうやろ」


鈴の腕を引っ張り、サトルの隣に座っていた鈴はバランスを崩して片手を地面につく

杏様…?


「それ以上、軽口叩いてみ?ほんまに怒るで。ことの重大さが分かってへんなら、先に2人で話すか?」


杏様が鈴に怒ることなんてなかった。
なんでもできる範囲で甘やかしてあげていた。その杏様が、鈴を叱る


「志木は、許してくれるよ。でもな、優しいからだけじゃない。あんたを想って許してくれるねん。それに甘んじてならまだしも、謝りもせんのは違うやろ」


「お、お姉ちゃんだって!!お姉ちゃんだって志木を危険な目に遭わせてるじゃない!!今だって怪我してるのに喧嘩までさせて…追い込んでるのはお姉ちゃんでしょ?」


何を!!
言い返そうと思ったが、杏様に止められる
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