愛は惜しみなく与う⑦
「え?襲わせた?初めて会った時ってあの……サトルが?襲わせるって……ねぇどういうこと?」
震える手でサトルに触れる鈴
「だから言っただろ?俺がチンピラに金渡してお前を襲うように頼んだんだ」
あれ、これまだお前に話してないっけ?そうサトルは鼻で笑った
「ど、どうして?」
鈴はやはり、知らなかったんだ
「どうしてだって???別に……そうした方が、コントロールしやすそうだったから」
言い終わる前か、言い終わった後か
杏様が動いた。サトルもそれを予想していたのか、笑顔で杏様の手を掴む
「せっかちだなぁ」
「言葉選べゆうたやろ」
そのまま杏様は掴まれた手を支えにしたまま、右足をサトルの顎に目掛けて振り上げた
「何、俺のこと殺す気?」
寸前でサトルは杏様をかわしたが、2人してそのまま倒れ込む
手は掴まれたままなのか、杏様もサトルの上に倒れ込んだまま動かない
チッ
舌打ちが聞こえたと思ったら、泉が2人のもとに駆け寄った。
杏様はなぜか動かない
「杏、話し合いはもういい。やろう」
杏様の脇に手を突っ込み、泉は杏様をサトルから引き剥がす。
でも
サトルから引き剥がした杏様の表情は、『絶望』そのものだった