愛は惜しみなく与う⑦
「杏?どうした?」

あ、れ杏様の様子がおかしい。
もう自分の傷なんてどうでもいい。


「杏様?大丈夫ですか?」


泉に抱えられる杏様は、目は見開かれて、固まっていた。


「おい」


泉は杏様の頬をペチペチと叩く

サトルに何か、言われましたか?
あまりにも様子がおかしい。泉の言葉にも反応しない。


「ちょっと、志木さん」


泉は杏様をズイっと私に渡してくる。頼む。そう言われました。

杏様のその身体にそっと触れると、ひんやりとして、そして…ずっと震えていた


「杏様?」

声をかけても反応しない。
反応しないというよりも、杏様に私の声は聞こえていないように感じる。


杏様の視線は鈴の方へ


そして


そのまま杏様は泣き出してしまった

え…


「どうしたんです?泣かないで」


溢れてくる涙を拭うが、杏様の涙は止まることはない。
泉はサトルの前に立つ。

鈴を見てみれば、何がなんだか分からないのか、呆然としている。


「…めん」

「え?」

「ごめん」


顔を小さな手で覆い、杏様は泣き続けた。


杏様が私の前でこんなに泣くことなんてなかった。そして、この状況で、堪えれないなんて。

何があったんだ
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