愛は惜しみなく与う⑦
人を傷つけた奴ってのも分かってる。


でも、こいつらから見たらあたしは、傷つけてくる奴なんかもしれへん。

あたしがすぐに、あの事件を調べればよかった。そしたら鈴が生きてることがすぐ分かったかも。

そしたら…

じゃああの時の子は?ってなってた。


逃げてなかったら、もしかしたら水瀬は、間違いを犯し続けずに済んだかもしれへん。


でも、全部、たらればの話やねんけどな。


ただ、言わなきゃダメやと思った。


なんで水瀬が戦意喪失してるんかは分からんけど。絶対に最後まで付きまとってくると思ってたからさ。

水瀬の姿が見えた時、時間かかるなって思ったけど、そうじゃなかった。


あたしの言葉は聞こえてないのかな。
しゃがみ込んで小さくなる水瀬の背中は、呼吸で少し上下してるから、生きてる、はず

静かすぎて怖い



「杏……もう行こう。反応もないから」

「うん。せやな」


1ミリも動かない水瀬
ある意味邪魔してこないなら好都合か


その場を離れて廊下の奥を目指す

全て終わったら、この場所を燃やそうと思ってる。
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