愛は惜しみなく与う⑦
そう言えればいいのに

私は弱い


お母様の理想から少しでも外れることを恐れている。


『お姉ちゃん。私も、お姉ちゃんの大切な人と仲良くなりたい』


こんな我儘、絶対却下されると思った。

だって鬱陶しいもの。
せっかく見つけた自分の居場所に、元の居場所をおいだした、妹の私が行くなんて。


困った顔で笑って、流されると思った。


驚いた顔をして、その日お姉ちゃんは、時間をくれと言って、お母様にみつからないように自分の部屋に戻った。


何の時間だろう

悩むことなんかないのに


嫌だと言えばいいのに


お姉ちゃんはいつも、お母様の視界に入らないように動いていた。まるで忍者

隣の部屋なのに、入口からお姉ちゃんが入ってくることはない。


部屋の窓がノックされる


カーテンをひらけば、バルコニーでお姉ちゃんが手を振っている


変なの

そこまでしてお母様の視界から外れなきゃいけないんだろうか。
でも私が知らないだけで、お姉ちゃんはきっと……お母様に辛く当られてたのね。色々きついことを…言われてたんだね
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