愛は惜しみなく与う⑦
「杏、それは違うだろ」
「んーん。違うくないよ」
優しく伸びてくる泉さんの手をお姉ちゃんは振り払う
そして力強い目は私を捉えた
「あたしもきっと、志木や泉のことを信じるなって言われたら反論する。2人が言ったことなら、信じようと思うし、信じたい。だから鈴の、その気持ちはわかるよ」
お姉ちゃんは……本当に物分かりも良くて、どんな時でも寄り添ってくるから
嫌いだ
「サトルを信じてるから、サトルが言ったことをそのまま呑み込んでしまってるんやな。まぁそれは分かった」
分かったと言ったお姉ちゃんは、全然納得していない顔
そのまま続けた
「じゃあ、あたしは?信じるに値せんってか?辛かったんも苦しかったんも分かる。そこで助けてくれたサトルに縋ってしまったんも分かる。
それで、サトルは、あたしが鈴を襲わせたって言ったんやろ?それ聞いてすぐ信じたん?違和感ないか?おかしいと思わへんかった?ちょっとでもおかしいって……
お姉ちゃんは、そんなことせんって、思わへんかったんか?」