愛は惜しみなく与う⑦
一向にたどり着かへん気もした


絶対…守るから

鈴も、みんなも…


そして、サトルも死なせへん!!!!


1番奥の部屋


半年ぶりのその場所は


視界に入るだけで吐きそうになった


気持ち悪い


あの日のことが全部蘇る


「ちょっと、杏、大丈夫?」

「うん、大丈夫…ごめん」


吐いてる場合ちゃう
とりあえずみんな、無事でいて


どれくらい経ったやろうか。昴の違反運転のおかげでかなり早く着いたと思うねん。

だから


「優先は?」

「みんなの安全確保。多分無傷でこの時間乗り切れる事はないと思う。サトルのことや。何かしてくる」

「わかった。妹は?」


せやな
できれば全て終わってから話したかったな



「鈴とサトルはあたしが。3人は皆んなの無事を確認して、怪我してたらすぐ病院連れて行ってほしい」


「…1人にはさせないからな」


わかってるよ
そのために一緒に来てくれたんやもんな



扉に手をかけたその時


サトルの笑い声が聞こえた



「杏、1人で飛び出すな!」


そんな昴の声を無視して、あの忌々しい部屋に入った。
< 9 / 404 >

この作品をシェア

pagetop