愛は惜しみなく与う⑦
鈴が傷付けたのは、あたしや


あたしがその罪を許せるなら、元に戻れるから。

これはあたしにとっても都合がええねんで。
東堂から解放されるから。
もう嘘をつかなくてもいいから。


鈴のためでもあり、あたしのためでもある。



そして、みんなが守ろうとしてくれた、あたしの未来のためにも。



「サトルと話そう」



鈴の手を握り、泉の近くに行く

泉の足元にサトルは倒れているから。


ほんまに、生きてるよな?


不安になる程倒れたままのサトルは、血もでてないし…ただ気絶してるだけやと思うねんけど。



「杏…」


あたしの名前を優しくよんでくれる泉は、後ろで震えたままの鈴をじーっと見た


えっと…



「顔見せろ」


それは鈴に向けて言った言葉やんな?
なんともまぁ、あたしが鈴の立場なら怖くて泣いてしまう言い方をする。


顔見せろって…

案の定、わかりやすくビクッと鈴が跳ねた

やれやれ



鈴は泉を怒らせたら面倒なことが分かったのか、ジリジリと背後からでてきて、泉の前に立った。
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