会長のお気に入りかよ‼-百花繚蘭-【完・番外編追加中】
俺は黙ってそいつを睨みつける。
今日、貴重な休日をなんでこんな奴に割かなくちゃいけないんだ。
「えーと……お父さんも飲み物注文してくるね?」
「俺に父親はいない」
またカップに指をかけて傾ける。
そいつは困ったような顔をしたけど、俺がいつも通りの態度なのをわかってレジカウンターへ向かった。
自分のカップをソーサに置く音も、店内の音楽に消えてしまう。
……こんな奴に呼び出されてなくちゃバイト行くとかしてたんだけど。
そんなことを思っているうちに、カップの乗ったトレーを手にして戻ってきた。
「母さん、最近どう?」
「あんたに報告することはない」
俺のそれこそ、こいつに何度言ったかわからない返事に、困ったように眉を動かした。
「蛍都、相変わらず口悪いなあ」
「あんたのせいで倍増しただけだ」
――小学生のこーちゃんが俺に懐いていた理由。
それは、俺がこーちゃんより性悪で口も悪いから、だ。
簡単に言えば俺を隠れ蓑にしていたんだな。