会長のお気に入りかよ‼-百花繚蘭-【完・番外編追加中】
蔦子先輩に驚かれて緒方くんは笑いをかみ殺しきれずに肩を震わせて笑っています。
余裕がない……んですか? 通常では?
「こーちゃん、そんな残念なものを見る瞳しないで」
「すみません。可哀想なものを見る瞳です」
「どっちも嫌だよ」
苦い顔をされてしまいました。
何と言うんでしょう……けいちゃんは私のどんなわがままも暴言もゆるしてくれる……という、勝手な思い込みが私の中にはあるようです。
小学生の頃の刷り込みでしょうか。
そうなると私は、思い出した以外にも相当失礼を働いているでしょうな。ははは。
……最近、ですが、思い出せなくてもいいや、と思うときがあります。
今が楽しくて、こんな性悪でも大切だと思える人たちがいて……このままが壊れるくらいの現実があるのだったら、思い出せなくてもいい、と。
逃げです。
思い出すのが怖くなってきて、それと同時にこみあげてきた思いです。
逃げた先に幸(さいわ)いがないのならば、私は思い出したいと思うのでしょうが、逃げた先が今なら、私は幸いだと思うのです。
記憶をなくす、とは私が何かから逃げた証拠ですから。
「こーちゃん? どうした、難しい顔して」