会長のお気に入りかよ‼-百花繚蘭-【完・番外編追加中】
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「斎城咎(いつきのじょう とが)、参りました」
ふすまの前に膝をつき頭を下げた咎は、中にいる人物に声をかけ入室が許されるのを待った。
「お入りください」
咎は面をあげ、己でふすまを開けて十畳ほどの和室へ歩を進めた。
上座には壮年の細面の和服の女性が背筋を正して正座していた。
咎はその手前で足を止め、胡坐をかいて座った。
「お呼びとのよし、いかがされましたでしょうか」
「ええ。急にごめんなさいね、斎城の若主(わかあるじ)」
「いえ。御前(ごぜん)の御為なれば」
咎は低姿勢で話す。
咎は斎城家の若当主であるが、女性はその上に鎮座する存在だ。
「実は、我らが姫様が司家に入るための御名を賜れました」
「ああ……姫がとうとう」
「正式に結婚するのはまだ先ですが、司家も準備を進めたいのでしょう」
「して、いかような」
「――斎宮(いつきのみや)。姫様は司家で、斎宮様と呼ばれることになりました」
「それはまた……」
「そして斎城の主として、貴方には姫様の護衛についてもらいたいのです。神代(かみよ)三基が姫様のお傍にいるとはいえ、あの方たちは司側の存在……。我ら大和(やまと)一門から、姫様の護衛を出すべきと判断しました。ですが、当主及びそれに次ぐ存在で、姫様と同い年は斎城の主、あなただけ。……引き受けてくださいますか?」
「この上ない栄誉にございますれば。身を引き締めてお受け致す所存です」
「ではよろしくお願いしますね。斎城咎として――西条斗賀として」
END.