会長のお気に入りかよ‼-百花繚蘭-【完・番外編追加中】
「――仕方ない」
すうと息を吸い込んでから、哀淋のお父様が顔を険しくさせた。
「幹、お前を蔦子の許嫁にする」
「「……………え」」
え。
哀淋のお父様の言葉に、哀淋も幹も俺も間の抜けた顔になった。
「と、父様? 本気で言っていますの……?」
哀淋がたじろいでいる。
「もちろん本気で言っている。だが、本物ではない。さっきも言ったろう? 今回の見合い話は『湖風』の思惑に対抗するためのものだと。だから偽物でいいんだ。幹はうちの縁者だし、蔦子と年も変わらない。以前から話が固まっていたと言って通用するだろう。幹、緒方の家族には私から話をするから、ここは肯いてもらえないだろうか?」
あ、ありゃ……? なんかさっきとは方向が違うけどすごい話になってきてない……?
哀淋のお父様の言葉と視線を受けて、幹は背筋を伸ばした。
「『あいりん』のためならば、俺はなんでもお受けいたします」
幹、かっけえ。
俺が一人で感心していると、哀淋のお父様が「しかし」と続けた。