冬の花
9
あの日…。

「…もし、この先何かあれば、
連絡して」

あの日、パトカーから降りる直前に、
阿部さんはそう言った。

持っていた小さなメモ帳に、
何かを書き、
その紙を私の手に渡した。

私はその紙を、見ずにポケットに入れた。

私は家に入り、暫くして、
思い出したかのようにその紙をポケットから取り出した。

そこには、携帯番号と思われる数字が書かれていた。

その書かれた番号は、
今ならもう見なくても覚えている。

この5年間、何度も何度もその番号を見た。


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