冬の花
『…はい』

その声は、5年振りに聞いた阿部さんの声で、
電話でもあまり変わらない。

『もしもし?誰?』

何か返事しないと、と思うのに、
声が出て来ない。

『…あかりちゃん?』

そう訊かれて、はい、と小さく頷いた。

『電話して来るって事は、何かあったの?』

その声が優しくて、なんだか泣き出してしまいそうになる。

「佑樹が私の前にマネージャーとして現れて…。
あの日、私達を見られていたの…。
阿部さん…どうしよう…」

そう言葉にすると、自分達が追い詰められているのだと、
さらにそんな気がして、どうしようもなく怖くなる。

『電話で話してもあれだから、
会って話せない?
今から、時間作れない?』

「…はい」

阿部さんと待ち合わせの場所を決めて、
電話を切った。
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