冬の花
「佑樹君にまさか見られていたなんて…」

「はい…。
私もまさか見られているなんて考えてなくて…。
あの家も調べたら、父親の血痕とか見付かるんじゃないかって言われて。
あの家も元々は佑樹の親の持ち物だし、
警察とかに調べられたら…。
どうしましょう…」

「…彼の事も、殺すしかない…」

呟くようなその言葉に、私は阿部さんに顔を向けた。

「納得出来ない?
どうにも出来なくて俺に電話して来たんじゃないの?
あの事をネタに、佑樹君にゆすられたりしてるんだろ?」

「それは…」

私を追い詰めるような阿部さんの言葉や目が怖くて、手が震えて来る。

佑樹に、ゆすられている。

お金は求められていないけど、
体をこれからも求められるだろう。


佑樹に抱かれている時、殺してやろうと思ったのに、
その殺意もいざとなると薄れて行く。

阿部さんに電話したら、きっとそうなると分かっていたのに。

そのつもりで、こうやって阿部さんと会っているのに。

「大丈夫だから」

その阿部さんの言葉に、
そっと頷いた。

< 111 / 170 >

この作品をシェア

pagetop