冬の花
「タクシーで来たの?」

部屋に佑樹を招き入れ、
私は一番にそう聞いた。


車で来ていないかどうか、確認する為に。

佑樹を殺した後、その車が私のマンションの近くにあると困るから。

「電車か迷ったけど、駅迄歩くのがしんどくて。
雨降りそうだし、暑かったから」

佑樹はこの場所にもう何度か来ているからか、
迷わずダイニングテーブルに腰を下ろした。


お互いオフの今日、私の部屋で一緒にお酒を飲もうと佑樹を誘った。

それは、昨日、仕事終わりに直接伝えた。

メール等が残らないよう、直接。


夕べ佑樹は私の部屋へは寄らず、
そのまま帰って行った。

きっと、今日思う存分出来るからなのか。


「けど、一体何の気まぐれ?
わざわざ一緒に酒でも飲もうなんて」

「ほら、再会してから、私達まともに話してないから。
一度、ちゃんと佑樹と色々話してみたくて。
私の仕事があれだから、お洒落な店とかに行けなくて申し訳ないけど」

「へー、お前の方が、俺とまともに話す事を、
避けてるように見えたけど」

佑樹はそう言って鼻で笑っている。

佑樹の言うように、
私は佑樹と話す事を避けていた。

脅されてからは、
顔も見たくなければ、声さえも聞きたくないくらいに、佑樹を嫌っている。

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