冬の花
「とりあえず、お酒とか用意するね」

私はキッチンへと行き、ワインボトルを手にした。

このワインには事前に細工をしていて、
コルクに小さな穴を空けて、
中に強力な睡眠薬を入れてある。

その睡眠薬は、阿部さんが用意した物。

そのコルクにある形跡を見られないように、
コルクをその場で空けてワインボトルをテーブルへと運ぶ。

そして、用意した軽食やグラス等も順に運んだ。

私は佑樹のグラスに、ワインを注いだ。

自分のグラスにも同じように。

企みがバレるのではないかと、
終始その手が小さく震えてしまう。

「「乾杯」」

佑樹と私、そのワインの入ったグラスを持ち、
当てて小さな音をたてる。

私は、薬が回らない程度にほんの少しだけそれを口にする。

佑樹は、ごくり、と大きくそれを飲んだ。

「へー、けっこういいワインだな」

そう言って、直ぐに飲み干した。

「おかわり注ぐね」

「ああ」

そう言って、注いだワインも直ぐに口を付けて、半分程飲んでいた。

佑樹はアヒージョやフランスパンを口にしながら、
順調に睡眠薬入りのワインを口にしていた。

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