冬の花
「あかりちゃん、おかえり」


その声に、知らずに俯いていた顔を上げた。


交番の前、阿部さんが立っていて、私にいつもの笑顔を向けている。


「あ、あれ?阿部さん今日は非番じゃないんですか?」


なので、帰りは彼に会えると思っていなかったので、
今はトキメキより驚きでドキドキしている。


「昼から交代の先輩が熱出して。
で、そのまま俺が代わりに」


「それは大変ですね」


そう心配しながらも、また阿部さんに会えた事を喜んでしまう。


「こればっかりは、お互い様だからね。
それに、今日は暇だろうから。
夜、けっこう吹雪くみたい」


阿部さんにそう言われ、空を見上げると、少し雪が降り出して来た。


夕べも夜はかなり降っていたみたいだけど、今夜の方が降るのかもしれない。


「だから、あかりちゃんも早く家に帰りなよ。
気をつけて」


「えっ?」


阿部さんはもう一度、早く帰りなさい、と私に告げた。


「…はーい。
さよなら」


なんとなくこれ以上居づらくて、私は交番を通り過ぎた。


段々と雪が強くなってくる。


傘がないから、早く帰らないと。

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