冬の花
「思ってたんですけど、鳴海さんって私の事名前で呼んでくれた事ないですよね?」

「そう?」

「そうです」

仕事上で話す際は、私を"岡田さん"と呼んでいた。

「あかり…さん?」

そう照れたように私の名を呼ぶ彼に、
私も少し照れてしまった。

「俺達、お互いの携帯番号すら今だ知らないままだよね。
俺、ずっと君には避けられていると思っていたから」

そう言われ、そう見えたんだ、と考えてしまった。

「私、鳴海さんの事避けてました。
多分、無意識に」

「まぁ、俺達最初は喧嘩から始まっているし、
ずっと俺の事よく思われて無かったんだろうね」

私は鳴海千歳を、避けていたと思う。

関われば、私はこの人を好きになってしまうと、何処かで思っていたのだと思う。

私は、ずっと阿部さんだけを好きで
いたかったのだと思う。

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