冬の花
阿部さんに会えない残念な気持ちのまま、家路を歩く。
先程よりさらに強く吹雪いて来て、歩く事も段々と困難になって来た。
商店街から離れると、家も少なくなり、
目に写るのは雪ばかりの真っ白の世界。
吹雪きで目の前の視界がぼやける。
なんだか歩く事が辛くなって来て、
このままここに行き倒れてしまおうか、と思って来る。
生きる事も辛いな。
特に未来に希望もないし、このまま死んでしまいたい。
目を閉じ、立ち止まる。
暫くそうしていると、背後からこちらに近付いて来る車のエンジン音が聞こえた。
こんな道の真ん中で突っ立っていたら、邪魔だよね。
そう思い、道の端にずれると、
軽自動車の小さなパトカーが私の横に止まった。
曇った窓ガラスが開いて、そこから顔を出したのは、阿部さん。
「あ、阿部さん?!
何してるんですか?」
「あかりちゃんこそ。
俺はパトロールだけど。
ほら、雪凄いから、動けなくなってる車とかないか見て回ってた。
それよりあかりちゃんまだ家に帰って無かったの?」
阿部さんにそう訊かれて、私がまだ制服だからそう思ったのだと気付いた。
「いえ。一度帰ったのですが、
ちょっと父のおつかいに」
そう言って、ビールの入ったビニール袋を見せるように掲げた。
「そうなんだ。
けど、お父さんもこんな雪の酷い日に娘におつかい頼むなんて…」
私の父親に対して少し怒ったように、阿部さんは顔を歪めている。
その表情は、この村で私に同情的な人達を思い出させた。
「いえ。さっき迄はそれ程雪も降っていなかったし…。
お小遣い目当てで、私から買いに行くって言ったので」
なんでか、大嫌いな父親を庇ってしまった。
多分、阿部さんには知られたくないのだろう。
私の父親が最低な事を…。
きっと、この村の人達から聞いて知っていると思うけど、
私がここで認めなければ、まだ大丈夫だと思う。
父親が最低で、同情されるのも、避けられるのも、
大好きな阿部さんにはされたくない。
「そう…」
阿部さんはそう言って頷いたけど、
私の言った事をどう受け止めたのだろうか?
先程よりさらに強く吹雪いて来て、歩く事も段々と困難になって来た。
商店街から離れると、家も少なくなり、
目に写るのは雪ばかりの真っ白の世界。
吹雪きで目の前の視界がぼやける。
なんだか歩く事が辛くなって来て、
このままここに行き倒れてしまおうか、と思って来る。
生きる事も辛いな。
特に未来に希望もないし、このまま死んでしまいたい。
目を閉じ、立ち止まる。
暫くそうしていると、背後からこちらに近付いて来る車のエンジン音が聞こえた。
こんな道の真ん中で突っ立っていたら、邪魔だよね。
そう思い、道の端にずれると、
軽自動車の小さなパトカーが私の横に止まった。
曇った窓ガラスが開いて、そこから顔を出したのは、阿部さん。
「あ、阿部さん?!
何してるんですか?」
「あかりちゃんこそ。
俺はパトロールだけど。
ほら、雪凄いから、動けなくなってる車とかないか見て回ってた。
それよりあかりちゃんまだ家に帰って無かったの?」
阿部さんにそう訊かれて、私がまだ制服だからそう思ったのだと気付いた。
「いえ。一度帰ったのですが、
ちょっと父のおつかいに」
そう言って、ビールの入ったビニール袋を見せるように掲げた。
「そうなんだ。
けど、お父さんもこんな雪の酷い日に娘におつかい頼むなんて…」
私の父親に対して少し怒ったように、阿部さんは顔を歪めている。
その表情は、この村で私に同情的な人達を思い出させた。
「いえ。さっき迄はそれ程雪も降っていなかったし…。
お小遣い目当てで、私から買いに行くって言ったので」
なんでか、大嫌いな父親を庇ってしまった。
多分、阿部さんには知られたくないのだろう。
私の父親が最低な事を…。
きっと、この村の人達から聞いて知っていると思うけど、
私がここで認めなければ、まだ大丈夫だと思う。
父親が最低で、同情されるのも、避けられるのも、
大好きな阿部さんにはされたくない。
「そう…」
阿部さんはそう言って頷いたけど、
私の言った事をどう受け止めたのだろうか?