冬の花


阿部さんと二人、先程と同じように父親がくるまれているブルーシートの塊を車内から取り出し持ち上げる。


「一回下ろして」


阿部さんにそう言われて、地面にそれを下ろした。


自分の両手が震えていて、今もまだ自分のした事が怖くて仕方ない。


阿部さんは、近くから転がっていた大きな石を持って来ると、
それをブルーシートを巻いていたロープの一部を外し、
その石を押さえるように挟み込んだ。


「…もっと石拾って来ます」


私はそう言って、大きな石を探す。


目ぼしい物をせっせと阿部さんの元へ運ぶ。


その間、阿部さんはロープを外しブルーシートを広げていた。


私に気を使ってなのか、父親の顔はブルーシートで隠している。


顔は隠れているが、それは紛れもなく父親の遺体で、
大量の血が付いている。


「その石、この中に入れて。
そして、もう一度シートでくるむから」


「…はい」


雪は相変わらず強くて、父親の遺体がすぐに真っ白になった。

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