冬の花
あの夜、私は家の近くでパトカーを降りて、
傘もささずに家に入った。


玄関の扉を開けると、電気やテレビやストーブはつけっぱなしだった為、
家の中にまだ父親が居るのではないか?
と錯覚してしまう。


居るわけがない…


父親は、死んだんだ。


私の目の前で、血を流して…。


阿部さんに言われたように、自分のこれからするべき事を頭の中で整理した。


明日、朝になってから交番に父親が夕べから居なくなったと言いに行く。


私がビールを買いに出掛けている間に、父親はどこかに出掛けたみたいだと。


父親は携帯電話も持たずに出掛けたようだと。


なかなか帰って来ない父親が心配だったけど、
雪のせいですぐに交番に行く事も出来なかったと言う。


家の電話も止められているし、
父親は大人だからそれほど心配もしていないのだと…。


それから、それから……。


明日、上手く言えるのだろうか…。


一晩中、その緊張感であまり眠れず、
私は朝になると寝不足のまま交番に向かった。


阿部さんが交代でもう居ないと分かっている時間に…。


あの日、私は無我夢中で父親が居なくなったと、阿部さんではないお巡りさんに伝えていた。


そのお巡りさんに連れられ近くの警察署へと行き、
またそこでも同じように父親が居なくなったと話した。


事務的に何枚か書類を書かされ、また父親の事で何か分かれば連絡すると言われた。


暫くは、警察から度々失踪した父親の捜査への進捗状況を伝える連絡が私にあったけど、
ここ最近は何も音沙汰はない。

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