冬の花
◇

「緊張してる？
あかりなら大丈夫だから、いつものように頑張って！」


テレビ局の廊下に所狭しと並べられたパイプ椅子。


今日、このテレビ局の会議室で、
春から始まる連続ドラマの主演の最終オーディションがあり、その参加者はパイプ椅子に座り、その時を待つ。


私はその一つに腰を下ろし、
その横でマネジャーの木元早苗(きもとさなえ)さんが私を先程からずっと励ましている。


木元さんは私のマネジャー。


まだあまり売れていない私にも、
こうやってマネジャーが付いているが、
彼女は私だけではなく、他のタレントのマネージメントもしている。


「あかりなら、絶対に大丈夫だから！
あかりの演技力なら、主演でもおかしくないよ」


「ありがとうございます。
けど、主演はもうデキレで決まっているから、今日のオーディションで審査員の目に止まって、他のいい役を貰うから。
だから、木元さん大丈夫だよ」


その為に、さっきもこのオーディションの審査員の一人である橋田プロデューサーをわざわざ廊下で待ち伏せて、
媚を売っておいたし。

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