冬の花
呼び出されたホテルの部屋のチャイムを鳴らすと、
暫くして扉が開いて鳴海千歳が顔を出した。


「外雨みたいだけど大丈夫だった?」


「え、あ、はい」


初対面ではないけど、
こうやってこの人と言葉を交わすのは初めてだからか、
急に話し掛けられて緊張してしまった。


今から、この人とこの部屋で二人きり…。


「事務所からマネージャーに車で送って貰ったので、
雨、大丈夫でした」



そう口にして、ああ、これは仕事なのだと改めて思った。


だから、木元さんに車でここに送って貰った。


仕事だから、この人に気に入って貰わないといけない。



「こんな所に突っ立っててもあれだから、
中に入って」


「はい…。
お邪魔します…」


私は鳴海千歳に促され、部屋の奥へと入って行く。


このホテルでそれなりにいい部屋なのか、
その広がる広い空間に戸惑う。


部屋の奥に扉がある。


その向こうが寝室なのだろうか?



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