冬の花
「そんな事をしたら、沢山の人間に迷惑が掛かるって分からない？
実際、それを実行しなくても、そう口にするだけでも」

「分かってる…。
分かってるけど…」

でも、保田美憂と並んでテレビに映る自分の姿を想像すると、怖い。

「１つ教えてあげる。
あくまで噂だけど、保田美憂とあるプロデューサーが不倫しているらしい。
数年前から。
業界ではけっこう有名で、そのスキャンダルが公になって被害を被るのを恐れて、ここ最近は彼女をあまりどこも使いたがらないみたい」

「けど、なんで今回は…」

そう口にして、分かってしまった。

「あくまでも噂だけど、今回のそのドラマのプロデューサーと、って事だろうね。
だから、俺がどうこう言っても、彼女は降ろされないだろうし。
諦めたら」

なら、彼女との共演は避けられないのだろうか…。

「君もこんな姑息な事しないで、
正々堂々とその片思いの彼の心を掴めば？
彼が保田美憂なんか目に入らないくらいに君が輝けばいいだけ」

鳴海千歳はそう言って、今度こそ部屋から出て行った。

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