冬の花
「私、もう本当に気にしてないですし、
保田美憂さんも、今回の事を乗り越えてまた頑張って下さいね。
私…この世界に入る前、あなたのドラマよく見てました。
あなたの笑顔って、本当にパアーって太陽のように眩しくて、
その笑顔は辛い事も跳ね飛ばすくらいのパワーがあって。

きっと、私はあなたみたいになりたかった…」

そう口にして、
私はそうだったんだと気付いた。

昔の私は、笑っていてもどこか暗い事を自分自身でも分かっていた。

保田美憂の天真爛漫な明るさが羨ましかった。

そして、阿部さんはそんなこの子の事が好きで。

保田美憂は憎らしい存在だけど、憧れて好きだったのだと気付いた。

「ありがとうございます。
私も本当は岡田さんと仕事したかったし、
久しぶりの連ドラで楽しみだったんですけどね…。
あ、足を止めてごめんなさい。
私はこれで失礼します」

保田美憂はそう言うと、逃げるように私達から離れて行った。

泣き出してしまう前に、この場を離れたかったのだろう。

テレビで見ていた印象もそうだけど、
こうやって実際会ってみて、
彼女は本当に女優の仕事が大好きなんだろうな、と思った。

なのに、何故、不倫なんて。

清純派の彼女はそんなスキャンダル知られたら仕事を失うかもしれないのに、
そんなリスキーな事を…。

現にこうなって…。

色々と考えてしまうけど、
私には関係ない事だからもう彼女の事は考えないでおこう。

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