Sweet break Ⅳ
ピピッ♪

不意に関君の右腕にしている腕時計が短い電子音で時刻を知らせてくれる。

『22時30分…そろそろ戻るか。いい加減、簑島の入力も終わってる頃だろ』

関君はそう言いながら、かけていた眼鏡を外すと、眉間を指で抑え、指圧を加える。

『…大丈夫?』
『ああ…さすがに疲れたけどな』

確かに、あの大量な打ち込みをほぼ一人でこなすには、肉体的な疲労もかなりな上に、ずっと液晶画面を見続けている為に、眼精疲労は半端ないものだろう。

『…ごめんね』
『ん?』
『私のせいで』
『お前のせいじゃないだろ』
『ううん、今回の件、私のサポートが足りてなかった。どちらにしても、未来君のミスは私の責任だよ』
『…なんかそれもムカつくな』
『?どういう意味?』
『気にするな、独り言だ』

関君は外していた眼鏡をかけなおす。

『…こういう時、私には落合さんみたいに、関君を助ける技術も能力も無いのがもどかしい』
『いつもいろいろやってくれてるだろう』
『それは…』

おそらくそれは”庶務として”…という意味で言ってくれているのだろうけれど、私はもっと関君にとって、特別に必要とされる存在になりたいのに。
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