Sweet break Ⅳ
『違うの…あのね、嫌とかじゃなくて、ほら、ここ職場だし、いつ誰かが来るかも…とか、いろいろ、ね?だから、その…』

必死に言い訳を探すも、一体何の言い訳をしているのか分からず、目の前の関君を見れば何故か自販機に寄りかかったまま、前かがみで、肩を震わせて口元を隠してる。

『ッ…無理って…ククッ…』
『関…君?』

関君は、そのままひとしきり笑いを堪えると『悪かった、少し揶揄っただけだ』と、謝罪する。

その顔は、二人でいる時だけに見せる、柔らかな表情。

『酷い。揶揄ったの?』
『二度もお預け喰らったんだ。これくらい許せ』
『お、お預けって…』

その言い回しに、1人紅潮するも、関君の方は何事も無かったように、並ぶ自販機の中から自分用の飲み物を購入してからさっさと出口にむかう。

『戻るぞ。これ以上時間かかったら、落合に何言われるか、わかったもんじゃない』
『関君、待って』

深夜のオフィス内の薄闇で、先を歩く関君の後を慌てて追えば、後ろを振り返ることなく、関君が呟く。

『…続きは週末だ。いいな?』

こちらに拒否権を与えないような、断定的な言い方だった。

どこから、何の続きなのか明確に聞かなくとも、いち早く自分の心臓が反応を示す。

もう迷う理由は何もない。

『うん』

前を行く関君の広い背中に、小さくもハッキリと返事を返した。
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