Sweet break Ⅳ



『いや、ホントマジで助かった。こう言っちゃ何だが、あまり時間も無かったし、取りあえず俺の渡した資料のまんま入力しただけでも充分だって思ってたんだ。それが、どうよ。あそこまで完璧に分析されてデータ化されてるとか、想定以上の出来だよ。本当、ありがとうな!』

金曜日の午後、無事滞りなく会議を終えた須賀君が、終わったその足で興奮気味に総務課にやってきては、私と未来君をつかまえるなり、何度も感謝の言葉を口にする。

『私はほとんど何もしてないよ、お礼を言うなら未来君にでしょ』

自分自身はお礼を言われるほどのことをした覚えも無く、堪らず隣にいる未来君に視線を投げた。

『もちろん功労者の主役は、未来君だよな!いや、君マジで凄いよ。営業の才能もあるんじゃないか。1年目であの洞察力、事務職だけに収まっておくのはもったいない』
『と、とんでもないです!違いますよ。僕が凄いんじゃないです。この資料は僕一人じゃなくて、朱音さんや関さん、それに同期の子にも手伝ってもらったので』
『え、そうなの?』
『あの…須賀さん。実は昨日の朝…僕、』
『なんだ。騒がしい奴がいるかと思ったら、須賀か』

未来君の言葉を遮るように、隣の島と仕切られたパーテーション脇から、離席中だった関君が現れた。

関君は、今始めて須賀君に気づいた風に入ってきたけれど、彼の高身長はパーテーションの向こう側からでも頭が少し覗いていただろうから、きっと事前に分かっていたに違いなかった。
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