Sweet break Ⅳ
しばらくすると、落ちてきた太陽がゆっくりと水面に触れ、真っすぐ横に一直線の光のラインを描き始めた。

その様子に気付いた人は次々に足を止め、砂浜にいる人も、波打ち際にいるサーファーさえも、誰もがその一瞬を逃がしまいと、照らし合わせたように水平線を臨む。

日中、満遍なく世を照らし続けてきた太陽は、少しずつ溶け込むように沈んでいき、同時に明るかった空が、徐々に薄紫色へと移行していく。

『あ~あ、見えなくなっちゃった』

完全に落ちきった瞬間に、近くにいた小さな子供が残念そうな声をあげて、周りの大人たちの笑みを誘う。

確かに、陽が落ちた先のこの明暗の落差に、太陽の持つ特有の偉大さを知る。

『陽が落ちると、明日また同じように上るのに、妙に淋しい感じがするのはなんだろう』

思わず口から零れた独り言に、意外にも関君が反応を示す。

『大昔は日の入りが一日の終わりを意味していたらしい。その名残りみたいなものかもしれないな』
『……』
『何だよ?』
『ちょっと驚いた。てっきり、”くだらない”って一笑されるか、哲学的なうんちくが返ってくるかと思ったから』
『お前一体俺にどんなイメージ持ってるんだ?この際言っておくが、UFOだって信じてる側だぞ』
『嘘でしょ!?』
『その手のコンテンツは欠かさずチェックしてる』

何故か堂々と断言する関君に、また知らなかった一面を発見。

…そういえば、いつだったか関君が来れなかった同期飲みで、須賀君達男性陣が『俺らはアイツにクールなイメージ無いけどな』と言っていたのを思い出した。

あの時は、”モテない男のやっかみだよねぇ”と笑っていたけれど、今ならあながち嘘じゃなかったんだとわかる。

別に、関君がクールだから好きになったわけじゃない私にとって、そこは大きな問題ではない。

むしろ意外な関君を知るたびに、同期でありながら少し距離感のあった関君が、どんどん身近に感じて嬉しくなる。
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