Sweet break Ⅳ

陽が落ちきった後の空は、時間の経過と共に一段と薄暗くなり、歩道沿いのあちこちに立つ街灯も明かりを灯し出した。

心なしか人の数も増え、海を見に砂浜に降りる人より、遊歩道沿いをぐるりとまわって夏祭りや花火の会場に向かう人の数が多くなった気がする。

『そろそろ行くか』
『だね』

人の流れに沿うように歩もうとした瞬間、危うく人にぶつかりそうになると、関君に手摺側を歩くように誘導され、そのタイミングで空いていた右手を捕られた。

すぐに隣の関君を見れば、真っすぐに正面を向いたまま、断言するように諭される。

『慣れるまで耐えろ』

思いのほか強く握られたその強さに、関君の意志を感じる。

『あ、あの、ちょっと待って、関君』

引かれた手を押し戻すように、少し強引に立ち止まると、関君が眉間に深く皺をよせ、怪訝な表情を見せる。

『何だ、もうギブとか言うんじゃないよな』
『ううんそうじゃないよ…でも、少しだけ放してもらえる?』

そう訴えれば、渋々繋いでいた手を解放してくれる。

『実はね、紗季に教わったの。こうすれば、そう簡単に手が離れないんだって』

言いながら、昨夜紗季から教わったように、関君の手のひらの指と指の間に交差するように自分の手を合わせてみる。

想像よりも大きな手のひらに慄くも、今更引っ込めるわけには行かない。

組み合わせた手のひらにきゅっと力を籠めれば、確かにホールド感はさっきに比べて確実に上がった気がする。

『なるほど…早坂にしては、良いアシストだ』

関君は、満足そうにするも、私の方はさっきよりも、更にドキドキが止まらなくなる。

だってこの方法で繋いでみて始めて知ったけれど、この繋ぎ方って普通に繋ぐ時よりも、触れてる手の密着度が半端ない。

指と指の間まで、直接関君に触れていて、そこを意識すればするほど心拍数が上がってしまう。
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