Sweet break Ⅳ
立ち止まった関君の視線の先を見れば、数人のお客が並ぶ、変わり種のたこ焼きの露店。

所謂シンプルな”たこ焼き”と呼ぶにはやや変わったトッピングの種類で、”オムレツ”や”カレー”、”明太子クリーム”や”塩から”…何ていうのもある。

『食べてみる?』

興味津々な関君の様子に、購入を促す提案を持ちかけた。

『俺は別に…でもまぁ、朱音が食べたいなら』
『じゃ、やめようか』
『…!』

関君の顔を覗き込み、意地悪くそう言うと、瞬時に残念そうな顔をする。

思わずその分かりやすい反応に、吹き出しそうになった。

『ごめん、嘘だよ』
『…嘘?』
『私も食べてみたいから、一緒に食べよう。普通にお腹も空いてきたしね』

関君が一喜一憂する姿が面白くて、つい揶揄ってしまった。

『ほら、関君。後ろ並ぼう』

繋いだ手を放して、たこ焼きの出来上がりを待つ列に並ぼうとすると、後ろから伸びてきた関君の手が私の頭ごと包み込み、耳元で『お前、素直じゃないぞ』と囁くと、直ぐに離れてはそのまま列の最後尾に並ぶ。

思わず心臓が止まるかと思った。

『す、素直じゃないのはどっちよ』

必死の想いで平静を装い、止まらない心臓の早音を意識しながらも、何事も無かったかのように列に並ぶ関君を睨みつける。

してやったりと、私を見る関君の目は、やっぱり甘く優しい。

きっと大丈夫…だよね。

言葉にしなくても、そこかしこに漏れ伝わる感情は、決して偽りではないに違いない。
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