Sweet break Ⅳ
『さすがに金魚すくいに2000円も費やしてたのは、ちょっと引いたけど』
『う、煩い…』
『でも子供達のヒーローにはなれてたよ?』

捕った戦利品は、近くで見ていた子供達にすべてあげてしまった関君は、本当にちょっとしたヒーローになっていた。

『うちは、両親がこの手のイベントや祭り好きで、俺も弟も小さい頃から四六時中連れて行かされたんだ。いろんな祭りで普段見ることの無い物を見たり、食べたこと無いものを食べたり…何より、夜なのに昼間のようなこの賑やかなのが楽しくてな』

キラキラした目ではしゃぐ、子供姿の関君が浮かぶ。

『素敵なご両親だね』
『騒がしいだけだろ。俺ら兄弟はいつも振り回される』

ウンザリだと言わんばかりの口調の内側に、両親への深い愛情が垣間見れた。

『…意外だろ?』
『ん?』
『らしくなくて、悪かったな。でもこれが素の俺だ』

両ひざに置いた肘の先で手を組み、顔を上げた関君にそう言われて始めて気が付いた。

もしかして、関君も不安なのかもしれない。

こうして会社では見せない素の自分を知られた時、相手がどう思うか、いつもと違う自分に幻滅されやしないかと。

『確かに、関君ってこういう人が多いところとか苦手な気がしてたから、ちょっと驚いた』
『だろうな』
『でも私ね、それよりもそういう関君が知れて”嬉しい”の方が勝ってるかも』
『…嬉しい?』
『うん。言ったでしょ?私はもっと本当の関君を知りたいって』

今日知ったばかりの関君の新たな一面を思い出しながら、断言する。
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