Sweet break Ⅳ
『今日だけでも、初めて知る関君はたくさんあったけど、どの関君も嫌じゃなかった。むしろ案外庶民的なところを知ることができて、少しホッとしたし』
『庶民的って…俺のイメージってどんなだよ』
『ん~”高嶺の花の王子様”…的な?』
『なんだそれ』

本人の知らないところで定着したそれは、当事者にとっては不本意なイメージらしい。

関君が言うように、こうして社外で会っていると、ただの同僚だったときのような、妙に近寄り固い雰囲気は無くなった。

そもそも、会社での関君のイメージも、周りが勝手に作ったイメージが先行しているだけなのかもしれない。

『関君、私ね…』

その時、無意識に心に浮かんだ感情が、口を次いで流れ出した。

『こうやって、会社から離れたところでいろんな関君を知るたびに、気付かされるんだ。ずっと片想いしてた時も、こうして一緒にいられる今も、結局のところ関君を好きな気持ちは、何も変わらないんだなぁって…』
『……』
『…ん?』

ハタと我に返り、口を噤む。

あ、あれ?

今、私、ストレートに告白…しちゃってた?

恐る恐る隣の関君を見れば、さっきと同じ姿勢のまま、固まってる。

穏やかだった心拍数が一気に上昇していく。

『え~っと、な、何言ってんだろうね、私…わわっ氷、解けてるっ!!』

持っていたかき氷のカップから溶けこぼれた氷が、手に流れて滴り、慌てて氷を一気に口に入れれば、眉間の奥がキーンと痛む。

『痛たた…』
『バカ、一気に食べるやつがいるか』
『だ、大丈夫、大丈夫っ、なんか手がべとべとするし、ちょっと、洗ってくるねっ』

言いながらスクリと立ち上がると、関君が何かを口にする前に、一目散にこの場から立ち去った。

公園内が薄暗くてちょうどよかった。

今、私、めちゃくちゃ顔赤い気がする。
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