Sweet break Ⅳ


よくよく考えたら、公園内に水場などいくらもあったのに、何故かメイン通りの反対側に、祭り用に特設された臨時手洗い場まで来てしまった。

とりあえず、一旦深く深呼吸をして、心を落ち着かせる。

動揺してかき氷を一気食いしたせいで、キーンと痛かった眉間も、今はだいぶ治まっていた。

洗い場の水道でひとしきりべとついていた手を洗うと、目の前の鏡で、頬の赤みが治まっているのを確認する。

今更ながらに、自分の恋愛偏差値の低さに辟易してしまう。

これが1年前なら、100歩譲って有り得ない動揺でも無かったかもしれないけど、今の私たちは、半年も前かられっきとした(?)恋人同士。

お互いを慕うのは当たり前の事実で、それを口にしたところで、何もおかしなことはないはずなのに。

何をこんなにも動揺してるのだろう。

もう一度大きく深呼吸して気を取り直し、祭りを楽しむ人の流れを横切って、関君の待つ公園に戻る。

そろそろ花火の時間が近づいているせいか、すれ違う人の多くは花火の会場である海岸へ向かい始めている様子。

メイン通りを越え、反対側の路地に入ると、先ほど関君が買ってくれたかき氷の店の前を横切り、その先の公園に向かえば、自然とすれ違う人の会話が耳に入り込む。

『なぁ、今の見た?』
『見た見た!ドラマの撮影とかじゃない?』
『絵になる二人でしょ。なんか、雰囲気良いよね~』
『ってか、女の方、泣いてなかった?』
『モデルかなんかじゃね?男イケメン過ぎるし』

各々が口々に発する言葉は、公園の方から歩いてくる人に限られている。

…何となく、嫌な胸騒ぎがした。
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