Sweet break Ⅳ

人の波が過ぎて視界が広がり、公園内が見えると、さっき自分が座っていた辺りに佇む二人の男女が見える。

薄暗い公園内でありながら、ちょうど近くの街灯があたり、それがまるでスポットライトのように二人を浮かび上がらせ、それこそ映画のワンシーンのようで、思わず他の通行人と同じように、一旦立ち止まって傍観してしまう。

『…関君？』

やっぱり、男性の方は紛れもなく関君のようで、それなら、一緒にいる女性の方は…。

関君の向かい側に立つのは、スラリとした長身の浴衣女性で、こちらからはその後ろ姿しか見えない。

紺地に薄紫のアジサイ柄をあしらった浴衣を清楚に着こなし、アップにした髪から襟元に流れる後れ毛は、まるで華奢な首元を色っぽく演出しているようにさえ見える。

”…誰？”

確かに、誰かが口にしたように、下を向く女性の方は泣いているようで、今にも崩れそうな細い身体を、関君が宥めるように、両肩に添えた手で支えている。

不快な思いがよぎると同時に、かすかに動いた隙に女性の顔がチラリと一瞬望めた。

”え……落合さん？”

その横顔は、いつもの眼鏡こそしていないものの、紛れもなく落合さんの横顔。

職場では全く化粧っ気がないけれど、今日の彼女はしっかりと化粧を施し、その美貌はその辺のモデルに引けを取らないほどの美しさ。

関君との絶妙な身長さや、醸し出す空気感が互いにあまりにも自然で、誰もが羨む理想の恋人同士のように見えてしまう。

”どうしてここに落合さんが…？”

そんな疑問が頭をよぎった時、関君が彼女に何か声をかけ、うなだれていた顔を持ち上げる落合さん。

その頬に涙が零れ落ち、一瞬関君と見つめ合う。

咄嗟にその光景から顔を背け、二人に背を向けると、その場から逃げるように立ち去っていた。