Sweet break Ⅳ


夏祭りのメイン会場である、商店街も終わりが近づいているせいか、だいぶ人の数が減ってきたよう。

つい1時間ほど前、関君と歩いていた時は、感じることの無かった夜風が、今は人々の隙間から流れてくる。

あまり潮の香りがしないのは、海からでは無く、山の方から吹く風だからか。

どこをどう歩いたのか、気付けば祭り会場の出口に近い、海側とは真逆の端まで来てしまっていた。

もう後20分も経てば、この祭りのフィナーレである花火の打ち上げの時刻になる。


”―――俺と落合は何もない”


揺るがない眼差しで、あんなにハッキリと断言してくれた関君。

お互いをもっと知るために、一緒にいる時間を増やすことだって考えてくれていた。

今日だって、ずっと触れていた手の指先から伝わる想いは、決して自分の勘違いなんかじゃないって思えたのに。

さっきのことだって、何か理由があるのかもしれない。

わかってはいても、付き合い始めからずっと消えない自信の無さが、こういう時に現実と向き合うことから逃げることを選択させてしまう。

何やってんだろう私、こんなところまで来て…。

本当はあの場で、堂々と聞けばよかったんだ…こんな風に、逃げるよりも。
< 126 / 145 >

この作品をシェア

pagetop