Sweet break Ⅳ

ヒュ~…ドンッ!ドドンッ!!


独特な管楽器の高い笛の音のような音から、ズドンッとお腹に響く火薬玉の弾ける音。

薄闇を一瞬にして、パッと明るく照らす大輪の花火が上がった。

『…綺麗』

関君が言うように、海岸から見るよりも幾分小さくはなるものの、花火全体が立体的に見え、下から見上げた時より、むしろ迫力を感じる。

本日の天候は、やや薄雲はあるものの、概ね晴天の花火日和。

より美しく魅せるために、人工的な照明は極力落とされているために、通常時よりも深い漆黒の空。

そこに、次々浮かび上がる鮮やかな色彩の花火は、さながら光のモニュメントのように、映像として目に焼き付いていく。

打ち上がる花火の合間にチラリと隣を見れば、同じように夜空を見ている関君の横顔。

私の視線に気付いたのか、一瞬、目が合った。

『何だ?』
『ううん、何でも』

贅沢…なのかもしれない。

こんな風に、関君のすぐ隣で一緒に花火を観てるとか。

本当はこれだけで…関君の”恋人”になれただけで充分だったはずなのに。

いつの間にか、私だけを見て欲しいとか、随分欲張りになっていた。

同僚の関君に、こっそり想いを寄せていただけのあの頃の自分を思い出し、ただ今は、この瞬間の幸せを噛み締めることにする。
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