Sweet break Ⅳ


約30分間のショータイム。

夜空に次々と浮かび上がる多種多様な花火も、いよいよクライマックス。

残り5分になり、華やかな色合いの比較的小ぶりな花火が、海面近くで連続で無数に打ちあがった後、突如訪れた静寂。

意図的に消された照明もいまだ再点灯しないことから、花火の打ち上げが終了したわけではなさそう。

時間的にも、最後の大花火が打ちあがるまでの小休止のようだ。

既に打ちあがった花火のスモークが、海岸から上がってくる風に乗って、かすかに鼻先を掠めれば、大人げなくワクワク感が増して聞く。

『次が最後だね。どんな花火なんだろう?』
『……』

何気なく呟いた問いかけに、関君からの返答はない。

不思議に思い、隣に立つ関君を見るも、何故か真っすぐ眼下の海を眺めながら、何かを考えているようだった。

『3回だな…』
『え?』
『計算間違いを、3回したんだ』

唐突にそう切り出された。

『えっと…何の話かな?』

あまりに何の脈絡も無く話し出すので、最初は何のことだかわからず、聞き返してしまう。

周りに照明のたぐいが一切なく、月明かりも今は薄雲に隠れていて、すぐ隣に立っているのに関君の表情は読み取れない。
< 133 / 145 >

この作品をシェア

pagetop