Sweet break Ⅳ
午後のまったりとした時間帯。

カウンターを背に立ち、窓からの採光を浴びる未来君の髪は、ふわふわと金色に透けて見える。

そういえば、未来君とこんな風にプライベートな話をじっくりしたことが無かったかもしれない。

それこそ、仕事の上では私の方が先輩だけれど、こと”恋愛”に関しては、未来君の方がずっと上段者の可能性だってある。

…そうだ。

この際、このチャンスに”アレ”を確かめてみようかな。

『未来君』

意を決して、未来君に声をかける。

『はい?』
『ちょっとお願いがあるんだけど…』

言いながら、カウンターの椅子から降りると、未来君の正面に立った。

関君よりは若干低く感じるけれど、160㎝に届かない自分と比べれば、かなり高く思えた。

『私の頭の上に、未来君の手、置いてみて欲しいの』
『…は?』
『ほら、ここ。ちょっと手を置いてみてくれればいいだけだから』

そう言いながら、自分の頭上を指し示すと、未来君はあからさまに抵抗を示す。

『い、嫌ですよ。何で僕が…先輩の…しかも女性の髪に触れるなんて』
『髪っていうより頭ね。深く考えずに、ちょこっと乗せるだけでいいから』
『乗せるだけって…』
『確かめてみたいことがあるの』
『何ですかそれ。っていうか、俺、関さんに殺されますよ』
『ん?どうして今、関君が出てくるの?お願いしてるのは、私なのに』
『いやいや、そういう問題じゃなくてですね…』

正直、大したお願い事でも無いのに、思いのほか強く抵抗され、こちらも引っ込みがつかくなった。
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