Sweet break Ⅳ
『…計算なんかするなよ』
『え?』
『お前らしくない』

階下から視線を戻すと、窓の外を見ていたはずの関君が、少し不機嫌な様子で私を凝視していた。

『第一、他の男の気を引いてどうする気だ』
『え、あ、えっと…そういうつもりじゃ…』

思わず動揺して、しどろもどろの返答になってしまう。

ピピッ

会話の途中で、小さな電子音が鳴り、関君が目線を私から自分の右腕にした時計に移す。

『…会議の時間だ』

関君は単調に言いながら、眼鏡のフレームを正すと、即座に仕事モードに切り替える。

『お前もいい加減、簑島を待たせるなよ』
『…う、うん、わかってる』
『じゃあな』

そう言うと、さっきの会話など何もなかったように、サクッとこちらに背を向け、立ち去って行く。

関君にとっては、何の意味も持たない一言でも、私がどれだけ敏感に反応してしまうのか、わかっているのだろうか。

”何かちょっと、怒っていたような気も…?”

考えても仕方がない。

小さく溜息を吐きつつ、とりあえず未来君の待つ執務室に向かうべく歩き出す。
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