Sweet break Ⅳ

春先、関君と互いの気持ちを確認し合い、晴れて恋人であることを認識したあの日から、職場以外で会うというだけで緊張していたデートもだいぶ慣れ、それと同時に新たな問題に直面してしまった。

俗にいう”手を繋ぐ”という極自然な行為。

それはむしろ”恋人”という存在ができたなら、どんな恋人達の間でも比較的付き合い始めから、当たり前のように行われることで、思えば関君との初めての休日デートの時(※)など、それが無いだけで不安になった程。(※Sweet breakⅢ参照)

ところが、いざその次のデートの時、関君から自然に手を繋がれた後、5秒も持たず、その手を放してしまった私。

その後も、何度もその機会はあったにも拘らず、関君に直接的に触れる(触れられる?)ことの恥じらいと、極度の緊張が先に立ち、ことごとく繋いだままでいることができなかった。

関君は凹む私に”気にするな”って、言ってくれたけれど、あれから休日デートや二人でいるときも、関君の方から触れてくることが無くなってしまった。

それからしばらくして、関君の仕事が忙しくなり土日も時間が合わず、今日は久しぶりに訪れたデートだというのに…。

目の前の手のひらをみつめ、自ら手を繋ぐなんて、あまりにも難易度の高い行為に、いつになく緊張が高まり、途方に暮れてしまう。

イマドキ小学生の男女だって普通にできる、その何てことの無い行為の、なんと難しいこと。

…と、不意に目の前の手が下げられてしまう。

『あ、待って』
『もういい、無理するな』
『で、でも私っ、嫌な訳じゃないから』
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